THE CONVOY SHOW コンボ・イ・ランド再演

コンボ・イ・ランドの初演で色んなものを受け取ったはずなのに、再演は初演よりも更にたくさんの物を受け取れる公演だった。コンボ・イ・ランド再演のどこがすごかったのか、考えたことを書いてみる。

 

コンボ・イ・ランドは演劇パートとショーパートで構成されていて、およそ前半2時間くらいが演劇パート、後半1時間くらいがショーパートだったのではないだろうか。いずれにせよ役者たちは大半の時間を舞台の上で過ごしていて、ハケたり休憩をする時間があまり長くない中、バチバチに演技をして、バチバチに踊る濃密な幕間なしの3時間を過ごす。3時間の間ノンストップでコンボイショウを見せられ続けていて、まさに流れ星の残像のようにキラキラは目に焼き付いているけれども、まぶしすぎて、正直細かい部分は全く思い出せない(!!!)。思い出せないけれども、断片的に何が良かったか、どこがキラキラして見えたかの思い出は残っていて、なんかよくわからないけどわ~っと泣いてしまった記憶も残っていて、自分は何にそんなに感動していたのだろうか。

 

コンボ・イ・ランド再演はランド初演と同じく、若手がコンボイに入ってからの演目がオムニバス形式で走馬灯のように流れることで構成されている。過去の演目同士はそれぞれ強固なつながりがある訳ではなく、かといって完全に独立している訳でもなく、まさにおもちゃ箱をひっくり返したように、それぞれの演目の象徴的なシーンが断片的に上演される。断片だからと言って読後感がばらけるわけではなく、根底に37年間を慈しみ、懐かしむ想いがあるから、ランドを見終える頃には、過ごしてきた日々の輝きが知れて、コンボイをもっと好きになっている。ATOMの、サルトルの登場シーンやajapanのトゥクトゥク運転手との会話のシーン、ポ~の地球を勇気づけるシーン、星屑のオジサンたちと若者たちの志が同じだとわかるシーン、one!の全員が一つになるシーンなど、思い出深いシーンが出てくる度に自分がその演目を見に行った時の服装とか空気感、期待感、見終わった後の冷めやらぬドキドキなど、色んなことを思い出してオジサンたちと一緒に過去を振り返っているような気持になる。(ajapanだけ見てないのでそこは想像で補完する!!)

私は若手をきっかけとしてコンボイを見始めた人間だから、いつまでもコンボイのオリメンに対して外様のスタンスで接していた部分がある。コンボイのことは大好きだけど、文脈や個々の人間性が重視されるコンボイなのに、今までの文脈で知らないことがいっぱいある。それがある種引け目になっていた。けど、今回のランドは素直に37年間の歴史の重みを受け取ることができたと思う。

今回のランドで私が一番印象に残ったのは、若手メンバーの存在感がすごく増したように思えたこと。そして、若手の存在感が増すほど、より一層オジサンたちの厚みを感じるようになったこと。前回のランドの時自分が書いた文章を見返していたら、どうやら当時は本田さんと壮太郎さんが若手番長を張っていることが新鮮だったみたいだけど、今回は他の若手メンバーたちが今までよりももっともっと自分を出していたことが印象に残っている。今回は新メンバーが入ったり、前回ランドに出ていなかった人が増えたことによって、役のセリフやシーンがその人に合わせて書き換えられ、内容がかなり変わっている。コンボイは役者の人間性に真摯に向き合って作品作りをしていらっしゃるから、前回ランドにいなかった人がその場にいることに全く違和感がなく、むしろ人数が増えたことによってパワーアップしているように見える。今回のランドでは、初演と比較して変更された部分がわかることで、新しく入ってきた3名も含め、参加メンバーのその人らしい魅力が今までよりもたくさん見えた。

そして、同時に若手が強くなればなるほど、オジサンたちのすごさが際立つ。バチバチに身体の限界を突き詰める姿に心を打たれる。限界まで体を酷使することは役者の労働環境を整える上であまり歓迎されることではない、という風潮もあるが、なぜかコンボイの出演者たちはそのきつい行為を「楽しい」と言って突き詰めていく。限界を迎えようとしていることと、彼らがその状況を楽しんでいるであろうことの高度なバランスによって泥臭くても勇気をもらえる舞台が出来上がる。強くなった若手も、更に上を行く存在感を発揮するオジサンたちも、等しくみな泥臭い姿でいる。コンボイの魅力とはなんなのか、という疑問に立ち返った時に、前回のランドを見た時は一人一人が持つ生命のパワーだと結論付けたけど、今回のランドを見て更にもっと深い魅力があるんだということに気づいた。個の生命力の強さだけではなくて、各々が個を磨いて行った結果、全体も良くなるという奇跡的な循環が生まれている。そして、最後には結局全員横並びで一つになって立つ。個々の強さがわかるからこそ、全員で横に並んだ時の一体感がすごすぎる。個の強さだけではなく、ワンラインになった時の全体の強さは何回見ても、どの演目でも、変わらず感動できる部分で、これがあるから自分はコンボイが好きなのだなあと思う。

コンボイは演目の中で何回もワンラインになる。演じたり、踊ったりするところを見ながらどんどん自分の中での個々の人間性に対する解像度は上がっていくので、ワンラインになる度にスゲーーー!!!と思う気持ちはどんどん強くなっていく。おびび(帯金さん)が、今まではオリメンの中に溶け込むことに必死だったけど、今回はもう少し個を出していきたい、というようなことをパンフレットで話していたけれども、今までもしっかり存在感を出していた所が、今回はさらに強く、個人としての存在感を見せてもらったような気がした。帯金さんのみならず他の若手メンバーや新しく入ってきた3名が個々の魅力を携えて舞台上にいてくれていて、オリメンさんたちも呼応して更に存在感を上げていて、ワンラインの強さにやられて改めてとても感動してしまった。

 

あとは、勝手に私が抱いてしまった感想の話をさせてほしい。私の86歳になるじいちゃんが最近がんを発症して病院と老人ホームを行ったり来たりしながら生活するようになった。もともと20代の私よりも体が強く、全然体調を崩さないタイプで、なおかつ毎日10キロのウォーキングをしていて、ご飯をよく食べ、よく眠り、ピンピンしていたじいさんだった。だけどついに年齢に逆らえない時期が来たらしい。オリメンのオジサンたちを見ながら、オリメンさんに失礼だなとは思いつつも、そのじいさんのことを思い出してしまった。

50代、60代の出演者たちは若手に比べると身体能力は衰えているし、普通にしている時は見た目も老けているなあという印象を受ける。でも、舞台の上に立っている時はぐうの音も出ないほどかっこいい。

10代から60代まで並んでると思うと、その年代の前と後ろにある生まれてくること、死んでいくことを連想せずにはいられない。コンボイでは、10代から60代までみんな等しく生き生きとした顔で舞台の上で生きているから、もしかしたら、生まれてきたばかりの人も、もうすぐ死んでいく人もきっとその延長線上で楽しく生きているのではないかという想像をさせてもらえる。60代になっても、「まだ終わっちゃいない。お楽しみはこれからだ。って、ガラクタが言ってるよ」みたいなセリフを言ってくれる人がいることが、自分の人生にとって希望になる。おれのじいちゃんが人生が一番楽しかった時は50代になって、自分の子どもたち(要は私の親やその弟妹たち)がそれぞれ就職したり結婚して実家を出て行ったあと、妻であるおばあちゃんと2人で過ごしていた頃だという話をしてくれたことがある。我々、若い方が価値があるとされている世界に生きてしまっているけれども、実際はどうやら年取ってからの方が楽しいという人生も世の中には存在するらしい。コンボイの中であれだけ年とってる人達が生き生きしているのだから、自分のじいちゃんも死ぬ直前までまだまだ楽しいことが待っている可能性があるのかもしれない。コンボイが伝えたかったこととは全く違うかもしれないけど、その一縷の希望をポジティブに信じてみようかなという気持ちにさせてくれるパワーを持った演劇だと思った。

 

私はランドから勝手に色々受け取ったつもりでいるけど、明確な答えを提示せず、コンボイという団体の良さの解釈はある程度観客側に委ねられている演目だと思う。コンボイを長く見ている人、今回初めてコンボイ見たよという人、色んな人にそれぞれの答えがあるはずの演目だから、いろんな着眼点での感想を見てみたい。私は年代がばらけていることに注目してコンボイの感想を書きがちだけど、彼らが若かった時代は全く別の魅力があったはずで、それを踏まえてランドを見たらどんな感想になるのかすごく気になる。

いずれにせよ追い続けるほどにコンボイの魅力がわかってきて、これから先もコンボイを見て、どんどん魅力に気付けるのかと思うと今後の演目を見るのがとても楽しみ。コンボイはいつか終わる、と大社長がたまにツイートしているけど、終わる日はまだまだ先でも良いのではないでしょうか!?!?今後も既存作品の再演も、新作公演もたくさんのコンボイが見られることを楽しみにしています!!!!